神のみぞ知る世界は
ゆっくりと。
扉に向かって歩いていく。
来たばかりの頃に抱いていた純粋無垢な探究心好奇心は何処へやら表情までは悟れずとも暗い感情が身に纏う空気からも滲み出ていて。
「おや。もうお帰りで?」
ずいと顔を寄せてきた大柄の雄牛の頭の男は酒臭かった。うげえっ、とピットが嫌そうに手で扇ぐがパルテナは顔色ひとつ変えずに。
「お先に失礼します」
あの場所に座ることを選んだのは彼らだから。
「澄ました顔をしやがって」
「口が悪いぜ。蛇の旦那」
蔵面の奥で目を細めて通りすがる。
「適材適所ってもんがあるだろうよ」
「ほほう?」
関係ないんだから。
「こんな綺麗なところより。邪神様ってならぁもっと暗くて淀んだところがお似合いさ」
仕方ないよ。
「、ルーティ?」
怪訝そうに振り向いたピットに。
「……違う」
固く閉ざされていた口をぽつりと開く。
「仕方なくないよ」
ぐっと拳を握って顔を上げる。
「神様だって痛いんだよ」