お姉ちゃんに任せなさい!
普段穏やかな時間が流れるだけの静かな森もこうなれば賑やかなもの。騒ぎ立てながら過ぎた後には草陰から兎の親子が並んで顔を出すほどに。
「はー。いつまで歩くんだよ」
気怠げにトゥーンが訊ねた。
「標的が見つかるまでですよ」
「いっそのこと罠でも張ってさ。待った方がよくね?」
ディディーが提案する。
「冴えてるじゃん。それ採用」
「だろ?」
「そんなん採用せぇへんわ」
「言わせておけ」
小さく息をついてユウは視線を上げる。
「……霧が出てきたな」
濃霧。懲らせど深い白の世界。
一瞬だった。リュカは逸れないように前方を歩いていた相手の服の裾を掴む。
「っひゃ」
声を上げたのはピチカである。
「誰?」
「ごっごめん」
「リュカ?」
「なにやってんだよ……」
溜め息。
「っ誰だよ! 俺の足蹴ったの!」
「そんなに怒鳴らなくても」
「え、今のピチカ?」
「うぅーん僕かもしれない」
「それならいいけど」
そうして程なく。
「いやお前それどういう意味だよ」
視界を妨げていた霧が晴れる――