お姉ちゃんに任せなさい!
……小鳥たちの囀りが遠く。ひらりと舞い落ちた木の葉が擽ったくて払ったと同時にゆっくりと瞼を開いた。どうして目を覚ました直後の視界というのはこうもぼやけるのか……
「目を覚ましたか」
まだはっきりとしない意識の中で目を動かして状況を確認していたその時。幼馴染みの声がすぐ側から聞こえてすぐにそちらを振り向いた。
「……ユウ」
普段よりも口数の少ない彼に初めこそ違和感を覚えたが次第に朧げだった意識も、意識を失う直前までの記憶もはっきりとしてくる。
そうだ。
私たちはあの霧の中を抜けた後……
「懐かしい夢を見ていたわ」
リムはぽつりと呟いた。
「……子供の頃の夢」
もう。はっきりとは思い出せないけれど。
きゃあきゃあとはしゃいで自由に走り回って。疲れて眠くなっちゃって。
「そうか」
柔らかな風が吹く。
彼の横顔はひどく穏やかで。
「私は久しぶりに健全な夢を見たぞ!」
「夢の世界に帰ってくれ」
抱きつくリオンをジト目で押し退けるユウ。
「そういえば、霧も晴れましたね」
「晴天さまが眩しいわぁ」
リムはくすくすっと笑みをこぼす。
「せやけど肝心の魔物はどうなったんやろ」
「それらしい気配も失せているな」
「――でしたら」
リンクはにっこりと笑って。
「彼らに聞かれてみては如何でしょう?」
差し示されたその先には。
一箇所に集まって眠る子供たちの姿。
「ほんっま子供やねんから」
「……そうね。でも」
リムは肩を竦めて笑う。
「きっと、いいお姉ちゃんになるわ」
――彼女たちの紡ぎ出す未来は。
今あるこの世界より、ずっと。
end.
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