お姉ちゃんに任せなさい!
……本当に?
リムはゆっくりと立ち上がる。一刀両断された魔獣の下部が煙状となって風に吹かれて失せるのを見届けたが次の瞬間。
「避けろっトゥーン!」
一刀両断されたはずの魔獣の上部が今度は黒い手の姿となってトゥーンに襲いかかったのだ。間一髪ディディーの声によって躱したが魔獣はすかさず旋回して襲いかかる。
無防備の、ピチカに。
距離――ここからじゃ間に合わない。ようやく彼女も自分が標的となったことに気付いたがその頃にはもう既に目と鼻の先で。
「危ない!」
にぃっと口角を吊り上げる。
「教えといてあげる」
ピチカの頬を青い閃光がぱちっと跳ねた。
「女の子を怒らせたらこわいんだからね!」
刹那、彼女の体からバチバチと派手な音を立てながら凄まじい量の電撃が放たれた。それは今まさに首を掴もうとしていた魔獣を呑み込むと電気の圧で容赦なく絞め上げて。
数秒と持たず限界を迎えた魔獣はその姿を真っ二つにすると真っ白な霧を噴き出した。恐らく奴の蓄えていた魔力だろう。
「……す、ごい……」
ぽつりと小さな声で呟くのを聞き逃さず。
ピチカは霧に呑み込まれる直前リムを振り返ると無邪気に笑って返した。
「だって……お姉ちゃんだもん!」