お姉ちゃんに任せなさい!



踵落とし。それは確かに魔獣の頭――ではなく胴体のど真ん中を打ち抜いた。

魔獣はその姿にとても見合わない甲高い鳴き声を森中に響かせると胴体を反らしたまま硬直。たちまちぽかりと開いた口の先からはらはらと鱗が剥がれ落ちていきそれがディディーが打ち抜いた胴体のど真ん中に差し掛かる頃、素早く黒い何かが空に向かって飛び出した。

「逃がすな!」

ディディーが叫ぶのと同時かそれより早く地上から目を見張らせていたリュカとネスが背中を合わせて指をさした。瞳が金色に瞬けば超能力発動の合図でその黒い何かは空中に捕らわれて動きを封じられてしまう。けれど抗う力は強くギィ、ギィと建て付けの悪いドアのような呻き声を洩らして拘束を解くべく体を震わせる。

「PKファイヤー!」

二人が声を揃えて叫んだ途端に魔獣の体はたちまち赤く燃え上がった。ギャアアアア、と声を上げてそのまま燃え尽きるものかと思えばはらはらと焦げ落ちた羽根のひとつが煙状に歪んで地上に新たな姿を形作る。それは四足歩行の狼のような姿と成ると直ぐさま地面を蹴って飛び出した。その先で剣を構えたのは。

「……やああっ!」


しん、と静まり返る。

襲いかかった魔獣は一刀両断。


「ほんまに」

ドンキーは信じられないといった様子で。

「やりおったんか……?」
 
 
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