36.5℃
「ん、ぅ」
呻く声に小さく目を開いて側に駆けつけ俺は迷いなく弟の左手を掴み取った。程なく疼いた瞼はゆっくりと開かれ覗いた赤い瞳が姿を捉える。
「あれ」
弟は酷くきょとんとした様子で。
「兄さん……?」
……俺は小さな掌をぎゅっと握った。
「もう。兄さんは心配性だなぁ……」
そう言って笑うけれど直後にこほこほと咳き込まれたのでは弟を愛してやまない兄の心配を簡単に拭えるはずもなく。
「……ごめんな」
小さく呟いて床に膝を付く。
「寂しかっただろう」
包み込むようにもう片方の手を重ねて。
「兄さんが傍に居てやるから」
……だから。
「ふふっ」
弟は柔らかな笑みを浮かべた。
「兄さんの手、あったかい」
弱々しく握り返す掌が。
温もりが。
……愛しくて。
「兄さん」
頭の奥にまで優しく響く。
「おやすみなさい」