36.5℃
ドア横に備え付けられた電子機器に手を伸ばし、翳す。すると本来カードキーを差し込むであろう差し込み口が点滅し、次いで暗証番号入力の為のボタンが自動的に入力されて認証完了。程なく小さな電子音が鳴ってドアが開かれる。
部屋の中にはとても無機質な音が響いていた。端に寄せられている機械が静かに動作する音、時計の針の音。
透明な硝子の向こう側。
向かった先の扉を開いて狭い部屋の中、ぽつりと置かれたベッドに歩み寄る。
寝息。仰向けに小さな体を沈めて腕には点滴を繋がれ、普段より幾らか白く映る顔色ですやすやと無防備に愛らしく眠りこける弟の姿がそこにはあった。
……研究員らの対処というものはあまりにも大袈裟だった。難しい病気という話でもなくただの風邪だというのに。
普通の子供と異なり重要で且つ特殊だというだけで。彼らの都合だけでこうも簡単にも引き剥がされてしまう。
……、よくない。
やっぱりこの世界はよくない。