36.5℃




ピピピ、ピピピ。繰り返す無機質な音が目を覚まして支度をしろと急かす。

「お前たち。起きなさい」

ゆっくりと瞼を開けばぼんやりと博士の姿が映り込んだ。諦めの悪い睡魔に憑かれてつい頭をこっくりしながらも何とか体を起こし、それから隣でまだ寝ている弟の体を軽く揺さぶってみる。

「マスター」

青い髪を揺らして振り向いた。

「体温を計りなさい」

そうして渡された体温計を言われた通り脇に挟んだが弟ときたら此の期に及んでまだ目を覚まそうとしない。

「クレイジー」

ひと声。そして揺さぶる。

「、……は」

小さく声を洩らして漸く瞼がうっすらと開かれた。寝起きが悪いなと思いつつ額にかかった前髪を払ってやる。

「にいさ……」

赤い瞳がまだ眠たそうに見上げて。

「……あつい……」

それはお前がいつまでも布団にこもっているからだろうと呆れた視線を差した。短く息をついてこうなったら無理矢理にでも抱き起こしてしまおうと首の後ろへ手を滑り込ませたその瞬間。気付く。

「博士っ」

振り向いて。

「クレイジーが……」
 
 
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