あだ名で呼ぼう!
「……兄さん?」
それまでじっと見つめていたものを不意に後ろから覗き込まれた上、読み上げられるのだから大袈裟に肩を跳ねた。
「妙なあだ名を付けられたな」
「君よりはマシだと思うよ」
マークがそう言って振り返ったのはマクドというあだ名を引き当ててしまったマック。本名からそれが連想される気持ちも分からなくはないが彼がこの機会に消されてしまわないか心配である。
「……引き直そうと思って」
「あらもったいない」
ロリポップを緩く口から引き抜いて覗き込んできたのはベヨネッタ、気になる彼女のあだ名はというとセレッサである。桜色という意味が含まれているらしいが果たしてセレッサという柄だろうか。
「私、貴方みたいにイケてるお兄さんが欲しかったの」
「そっか。じゃあ引き直そうかな」
数分後。
「お、お兄ちゃん……」
もっと酷くなった。
「引き直しは一回までよボウヤ」
ぎくりと肩を跳ねたマークに続け様。
「いけない。……今はお兄ちゃんだったわね?」
十八歳が年齢不詳のお姉さま(これでもかなりオブラートに包んだ表現)にお兄ちゃんと呼ばれるマジック。
「勘弁してくれ……」
マークは縋るような声で呟くと深い溜め息をついた。