最終章



タブーは立ち止まり、振り返って。

「駄目に決まってるじゃないか」


ルーティのボルテッカーにより、全てが終わってタブーが取り込んだ全てを吐き出したあの瞬間……ラディスは敢えて、吐き出されまいとしがみついていたのだった。

それに気付かず、タブーは問いかける。他の誰でもなく、自分自身に、ひっそりと。

――かれらのいっていることはどういうことだろう。“たいせつなもの”ってなんだろう。ぼくにはわからない。

その時、答えたのはラディスだった。

――少しの間だけでいい。俺に体を貸してくれれば、それが何かを教えてやる。


「じゃ、そろそろ行くよ」

溢れそうになる涙をぐっと飲んで、タブーは顔を見られまいと正面に向き直る。


――本当はただ、会いたかっただけなんて、そんなこと言ったら怒るだろうなぁ……


間もなく、タブーの体を薄紫色の光が纏い始め、白い光は消えていき。それは別れのサイン。タブーは背中を向けたまま。

「じゃあな!」

明るい声音で、そう告げた。
 
 
66/67ページ
スキ