最終章



「触ってあげたら?」

膝に手を付いて少し屈み、タブーの後ろからルーティを覗き込んだのはリム。

「貴方の息子でしょ? だから、何も躊躇うことなんかないのよ。ねっ?」

そう言ってリムが笑いかけると、タブーは視線を上げて手を伸ばした。恐る恐る、ルーティの髪に触れては優しく撫でる。

戦闘の後でぼろぼろになったその髪が、特別撫で心地が良かったわけではなかった。

それでも、タブーはただルーティの髪を撫で、不意に一筋の涙が頬を伝い。

「……駄目だな、俺」

髪を撫でる手がぴたりと止まり、タブーはぎこちなく笑ってはぽつりと呟く。

「やっぱり、死にたくなかったなぁ……」

そして最後にルーティの頬に優しく口付けると、立ち上がって。背を向け、歩き出すタブーにフォックスは呼びかける。

「待てよ! ラディス!」

彼に与えられた時間が、どれくらいなのかは分からない。しかし、それでもフォックスは、かつてのパートナーには行ってほしくなくて、言葉を続ける。

「このまま……一緒にいれないのか?」
 
 
65/67ページ
スキ