最終章
「触ってあげたら?」
膝に手を付いて少し屈み、タブーの後ろからルーティを覗き込んだのはリム。
「貴方の息子でしょ? だから、何も躊躇うことなんかないのよ。ねっ?」
そう言ってリムが笑いかけると、タブーは視線を上げて手を伸ばした。恐る恐る、ルーティの髪に触れては優しく撫でる。
戦闘の後でぼろぼろになったその髪が、特別撫で心地が良かったわけではなかった。
それでも、タブーはただルーティの髪を撫で、不意に一筋の涙が頬を伝い。
「……駄目だな、俺」
髪を撫でる手がぴたりと止まり、タブーはぎこちなく笑ってはぽつりと呟く。
「やっぱり、死にたくなかったなぁ……」
そして最後にルーティの頬に優しく口付けると、立ち上がって。背を向け、歩き出すタブーにフォックスは呼びかける。
「待てよ! ラディス!」
彼に与えられた時間が、どれくらいなのかは分からない。しかし、それでもフォックスは、かつてのパートナーには行ってほしくなくて、言葉を続ける。
「このまま……一緒にいれないのか?」