第七章
「今現れた扉の奥に進んで、無事に帰ってこれたら君達の勝ち。その時は、僕と兄さんの所に案内してあげるよ」
真偽の程は定かではない。
しかし、何もしないよりはマシだと誰もがそう考えていたのだ。それぞれが素直に、パートナーと共に一つの扉の前に立つ。
「全員参加か。逃げるかと思った」
誰一人として逆らわず、扉の前に並んだのを見てマスターは小さく笑みを溢す。
それが妙にカンに障ったルーティは咄嗟に言い返そうと口を開くも、ウルフは静止させるように肩の上に手を置いて。
ルーティはゆっくりと息を吐き出し、己の気を沈めては扉のノブに手を伸ばす。
「ルーティ」
不意にマスターが声をかけた。
「お前は家族も、故郷も、友達も全て奪われた。さて、次は何を奪われるのか……パートナー? それとも、自分の命?」
ルーティはノブを回し、答える。
「もう何も奪われるもんか。……僕が」
姿が見えない代わりに空を睨み付け、ルーティは語気を強めて言い放つ。
「僕が全てを取り戻す!」
そしてルーティは扉を開き、その先へ向かう。パートナーのウルフと共に――