第四章
「ウルフには分からないよ!」
いつもは人の意見を優先して、左右されやすい単純なルーティが、今回、嫌に強気なのでウルフはたじろいでしまっていた。
ルーティは、ぽろぽろと涙を溢しながら。
「何も失ったことなんかないくせに!」
バシッ!
咄嗟に、ウルフがルーティの頬を平手打ちした。恐らく、カンに障ったのだろう。
ルーティは打たれた頬に手を添えると、ウルフを涙目で睨み付けて。何かを言おうとして口を噤み、その場を離れ、人だかりを押し退けてエックス邸の門へ。
「ルーティ!」
思わずフォックスが呼ぶと、一旦ルーティは立ち止まったものの、振り向かず、そのまま外へ駆け出していった。
後に残った人間を、雨が容赦なく打ち付ける。ふと、ゼルダが口を開いた。
「入りましょう。風邪を引きますわ」