第四章
フォックスの胸がチクリ、と痛んだ。
いや、恐らくはフォックスだけではなかったのだろう。誰もが俯いたり、顔を背け、この状況から目を逸らしている。
「強くて、優しかった! 大好きだった! それなのに、父さんだけがっ……」
いつの間にか、雨は土砂降りになっていた。ルーティはそれに負けない声量で、一番言ってはいけないことを口走る。
「父さんじゃなくて、別の誰かが死ねばよかったのに!」
フォックスを殴ろうと、振り上げられる右手。しかし、その右手は突如、何者かによって掴まれて。……ウルフだった。
今回、単独でウルフェンを飛ばし、世界各地の状況を調べに回っていた彼は、ようやく戻るなり、この事態に気付いて人だかりの中に飛び込んだというわけだ。
「よせ、ルーティ」
「離してよ! 彼をっ……殴らなきゃ気が済まないんだ!」
ウルフが静止させてるにも関わらず、ルーティはもがき、声を荒げて。
そして、ウルフの手を振りほどくと。