第三章
ごくりと息を呑む。……やっぱり。
「殺したからって確実にその権利を古代兵器に移し替えられるとは限らないんじゃねえか」
スピカは後方を歩きながら眉を寄せて訊ねる。
「実例がないからね。そこは僕たちもどうとも言えないけど──僕たちを殺してそいつがこの世界で最も尊い神に成れたのだとしたら」
……有り得ない話じゃない。
クレイジーは皆まで語らず言葉を切ったもののその場にいた全員が理解を得るには十分すぎる話だった──さて今現在自分たちは宛てもなく森の中を歩いているわけだが先導する双子には何か考えがあるのだろう。
「……これからどうするの?」
「決まってるだろ。古代兵器をぶっ潰す」
ルーティは苦笑いを浮かべる。
「気持ちは分かるけどまずは作戦を」
「必要ない」
今度はマスターに言葉を遮られてしまい、一瞬口を噤んだがルーティは負けじと。
「……二人は神力を使えないんでしょ!?」
音が止む。
「足手纏いだって言いたいわけ?」
失言だと気付いたのは直後のことだった。口を閉ざした時には遅く苛立ちを帯びた赤目が睨みつけている。ごめん、と即座に漏れたがそれが果たして届いたものか分からない。けれどクレイジーが吐き捨てたように神力を使えない彼らでは今から乗り込んだところで太刀打ちできるはずもないと危惧したのは無論事実だった。
「……分かった」