第二章



ルーティはむっとして、

「僕は僕のやり方を曲げるつもりはないよ」

ダークリンクは小さく笑みをこぼす。

「いい顔」

目を細めて。

「グチャグチャにしてやりたくなる」
「やめないか」
「づッッ」

一触即発の雰囲気に手刀を下ろしたのはダークガノンドロフである。容赦ない鉄槌を頭頂部に浴びてダークリンクは情けなく声を上げる。

「テメェふざけんなよクソジジィ!」
「自業自得だろ」

騒々しさに目を覚ましたのだろうスピカが未だ眠気の抜け切らない声で言った。

「悪いな。うちの馬鹿が」
「おはようスピカ。気にしないで」

ルーティは苦笑いを浮かべながら返す。

「……間違ってないから」


『フォーエス部隊』のように如何なる形であれ正義を貫いているわけでも『ダークシャドウ』含む亜空軍のように悪を徹底しているわけでもない。『X部隊』はメンバーの一人一人が個人の意見に捉われず自らの意思を尊重して悪でも正義でもない新たな答えを導き出す。

中立は謂わば最も敵を作りやすい立場だ。どちらか一方の味方に付かないということはいざという時にそのどちらもが味方に付いてくれないという意味にも繋がる。半端だと侮蔑されたのだとしても強く否定できない。……


「あだっ」

分かりやすく辛気臭い顔をしていたのだろう。ルーティがスピカに真正面から、額に目掛けて手刀を頂いたのは直後のことである。

「お前が堂々としてなくてどうするんだよ」

赤く腫れた箇所を押さえて摩りながら向き合うルーティに小さく溜め息。

「お前だけが選んだわけじゃない」

ああ。

「……そうだろ?」

今頃屋敷は大変なことになってるだろうな……
 
 
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