第二章



野宿に関しては様々な任務を通してそれなりに経験はあったものの決して慣れているという話ではなく。確かに睡眠はとれたのだがやはり硬い地面が相手では筋肉が凝り固まっているかのようですっきりとしなかった。朝日が昇りきらない内に目を覚ましたルーティは疲れの抜け切らない表情で肩を回す。こんなことをしてると何だか年寄りみたいで嫌になっちゃうな……

「号外ー!」

びくっと肩を跳ねる。振り向くと煤けた緑色のハンチング帽を被った一人の青年が新聞紙を片手に振り上げながら駆け寄ってくるのだ。

「ごーがいだよ!」
「は、はあ」
「ああっと失礼失礼! 困惑隠しきれない様子いただきましたありがとうございました!」

そう言うや否や青年はにっこりと笑って敬礼をしながら変化を解く。化けの皮を繕う黒の糸を解いて姿を現したのは他のダークシャドウとは異なり白磁の肌に腰まで流れる白銀の髪が見目麗しい少女。ダークゲーム&ウォッチである。

彼女はダークシャドウ唯一の白い個体。だからといって光に強いという話でもなくその特質も弱点も別段他と変わらない、分かりやすく言うならばアルビノ種というものだった。

「見てください!」

ダークゲムヲは嬉々として新聞を開く。

「一夜にして一躍有名人! すごいすごい!」


叛逆者、ルーティ・フォン。


一面にデカデカと書かれた太文字が刺さる──証拠と思しき写真は暈けているものだったが専門家の解析により本人であると断言されたとか何とか。一体いつの間に。昨夜安眠を許されたのはまさか全国的に指名手配するためにこんな記事を作っていたからなのだろうか。ここまで徹底されるとショックよりも寧ろ感心のようなものが芽生える。何が何でも正義に反するのであれば鉄槌を下すつもりであるらしい。

「ざまァねえなあ?」

口角を吊り上げて笑うのはダークリンク。

「中立なんざ半端な旗掲げてるからそのツケがようやく回ってきたのさ」
 
 
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