第二章



ルーティが視線を遣った先には未だ意識を取り戻さないマスターとクレイジーの姿があった。先の話が確かであれば彼らの象徴ともいえよう創造と破壊の力──すなわち神力は古代兵器を覚醒させる糧と消えたのだろう。まさかそれでもう二度と創造と破壊の力を使えないという話ではないだろうが翌朝すっかり元通りとまでは保証し兼ねる。彼らが目覚めないのもそうして神力を奪われた影響もあるのだろうが精神的な面も否定しきれない。話を聞いた今となっては時間の許す限り休んでほしいところだが、現状そうはいかないのが厳しい点だ。

「ほらよ」

え、と声が洩れそうになった。神出鬼没である点を今更咎めたところで彼らの特質なのだからどうしようもないだろうがルーティがふと顔を上げるとダークルイージがカップを差し出していたのである。湯気の上がるそのカップの中には淹れたてのコーヒーが揺蕩う。本音としてはココアの方が舌に優しくそうでなくともせめて砂糖を頂戴したいところだったが気遣いに口出しするほど自分も我が儘な人間じゃない。

「そいつを飲んだら今日はもう寝ろ」
「俺も寝たい」
「っじゃねーだろ!」

欠伸するダークマリオに突っ込みながら。

「俺たちが交代で見張っといてやるから連中に見つからない内に睡眠を取って明日の朝すぐに体動かせるようにしろってんだよ!」

有り難いお言葉である。

「あはは……うん。ありがとう」
「添い寝してもいいんスよ?」
「それとも膝枕をご所望ですか?」
「いらない」

両脇から囁きかけるダークフォックスとダークファルコにルーティが即答で返すとそれを見ていたスピカは深い溜め息を吐き出して。

「……さっさと持ち場に戻れ!」
 
 
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