第二章



、……今度ばかりは言葉にならなかった。

そうか。そうだったんだ。彼の発言を誰も否定しない沈黙こそがその証明である。息の詰まるような重い空気がマスターとクレイジーを慕う彼らの遣る瀬無い心情を表しているかのようでずきりと胸が痛む。


歩み寄ろうとしたのだ。

確かに彼らは。終止符を打つために。


……それを。

僕たちが裏切ったんだ。


「お前が謝っても反省しても仕方ないだろ」

ルーティは自然と拳を握っていた。

「結果は結果だ」
「でも、」
「話を戻しましょう」

濁った空気をリセットするかのようにして手を打ったのはダークファルコである。

「古代兵器を目覚めさせるには神力が必要──そして彼らはマスター様とクレイジー様を始末しようとした。つまり、目的は達成されたので後片付けの段階に入ろうとしていたわけです」

ルーティは顔を上げて頷く。

「我々は御二方を奪還しました。その結果──彼らは寝る間も惜しんで忙しく空を飛び回っている。どうやら完全に用が済んだという話では無さそうですよ?」

つまり──彼らは何としてでもマスターとクレイジーを殺さなければならないということか。マスターとクレイジーは"この世界"の主なのだから本気で殺めればどんな災いが降りかかるものか分からない──天変地異か、或いはふと世界そのものが終わってしまうなんてことも。

いや。文書に綴られた通りならその古代兵器は神に等しいわけで。もし、……もしも。


マスターとクレイジーを殺めることで世界の主たる権限も何も全てその古代兵器に移し替えることが可能なのだとしたら──?
 
 
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