第二章



……古代兵器。交渉。

「順を追って説明するっつったろ」

完全に頭の追いついていない様子のルーティにスピカは溜め息を吐き出す。

「マスター様とクレイジー様の性質から交渉を持ちかけるってのはどうしても違和感が残るんだろうが賢明な判断だ」

ダークウルフは腕を組みながら語る。

「古代兵器というのは天空大都市レイアーゼが大天空界だった時代に最も神に近いと云われる光の種族が作り上げた"神威"だ。そいつは大昔"この世界"を手に入れるべく大戦争を引き起こしたが世界の半分が光に灼かれる程の辛く激しい戦いの後、深い眠りについたらしい」

ルーティは小さく頷く。

「世界は手に入らなかったんだね」
「その時代の連中には心中お察しするが互角の存在とやり合うので精一杯だったみたいだな」

スピカは肩を竦める。

「そいつが大戦争を引き起こして世界の半分を光に灼いたのが紛れもない事実だってのは頭が腐るほど文書に綴られている。もちろんそんな化け物を目覚めさせるわけにはいかない。かといってそいつを保管している場所も突き止めたわけじゃない。だから、交渉を持ちかけた」

ルーティは話を聞きながら肌寒さを凌ぐように焚き火に向けて両手をそっと翳した。

「反抗されるリスクはあったわけだよね」
「そうだ。だからこそマスターとクレイジーは牽制要員にタブーを同行させた」

スピカはそれぞれの膝の上に肘をつくと両手を口の前で組みながら眉を寄せて呟く。

「……それが。裏目に出るとは知らずに」
 
 
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