第二章
スピカってしっかりしてるんだなぁ……
焚き火の明かりに照らし出される幼馴染みの横顔を向かいから見つめて思う。双子を寝かせている簡易的な木の葉のベッドも自分たちが足を休めるべく腰を下ろしている木の幹のソファーも全てダークシャドウがスピカの指示に従って作ったのだ。自分が同じ立場ならこうも冷静にてきぱきと指示を出せたものだろうか。
「さっきの」
スピカはぽつりと口を開く。
「亜空間には戻れないって話」
ルーティは頷いた。
「亜空間の方が安全なのは確かだよね」
「本来ならな」
スピカは小さく息を吐いた。
「順を追って説明する」
日が落ちれば若干の肌寒さを感じる夜空の下で周囲の警戒にあたっていたダークフォックスが己の上着を脱いでルーティの肩に掛けた。慌てて構わないからと断ろうとしたが本人はいつもと変わらぬ軽薄な笑みを浮かべてひらりと手を振ると持ち場へ。敵でなければ普通の人と何ら変わらない彼らに緊張の糸が緩りと解ける。
「まずこいつは確認なんだが」
ルーティは向き直る。
「国の連中が古代兵器を目覚めさせようとしていた話は知っているか?」
……古代兵器?
「鳩が豆鉄砲を食ったような顔ですね」
ダークファルコが笑う。
「何も知らなかったみたいだな」
「え、えっ」
ルーティは慌てて身を乗り出す。
「スピカ達は知ってたの?」
「そりゃあな」
肩を竦めて紡ぐ。
「古代兵器を目覚めさせる為には神力がいる。だから俺たちは先に調べを尽くして国の連中に交渉を持ちかけた。貴国の安全を永久保障する代わりに古代兵器を譲渡しろ、と」