第二章
成る程、と。ルーティは納得した。
触らぬ神に祟りなしとは言うがプライドの高い彼らのことだ。ひと度触れられたなら牙を剥くものと認識されていたのだろう。であれば積極性に触れられない彼の気持ちも汲み取れる。
「あは……生きてるねぇ」
反面、タフなタイプもいるようで。
「柔らかくて、温かいなぁ……マスター様」
抱きかかえたそのひとに頬を寄せて呟くダークマルスだがこれがクレイジーに聞こえていたら大目玉を食らいそうなものである。それだけで済めばいいものだが。
「わっ」
ルーティが羽根から降りた途端にアーウィンが消え失せた。幻影だったという話でもなく直前までそれを形成していた黒が操縦士たるダークフォックスとダークファルコの手元に集まり、吸収されてしまった辺り影によって生成されたものだったらしい。便利なことだ。
「行くぞ」
「うん」
宛てもなく森を彷徨うなどその内化け物に成り果てたりしないだろうか──なんておとぎ話と自分の置かれた状況を照らし合わせて要らぬ心配をしながら歩く。夜の森というものは何でもない風の囁きで木々の葉や茂みが笑うのが何処までも不気味でたまらなかった。
「……この辺にするか」
スピカは足を止めると此方を振り返って。
「火を起こせ」
「承知いたしました」