第二章



「ディディー!」

呼ばれた本人はびくりと肩を跳ねて。

「五分だけゆうていつまで観とるんや! はよ風呂済ませたらんかい!」
「うわわわ!」

バースト寸前のホカホカ状態──ではなく風呂上がりのドンキーが叱りつけるとディディーは慌ただしく立ち上がりリビングを飛び出した。大浴場は共有のものなのでそれぞれ奇数の時間帯は男性陣、偶数の時間帯は女性陣、と浴場を使用できる時間帯が予め決まっているのだ。

「わっ」

衝突を回避したルーティはその背を見送って。

「元気だねえ」
「ただの自業自得や」

リビングの入り口に立っていたドンキーはそう言ってふんと鼻を鳴らす。きゃあきゃあと騒ぐ声に今日も平和だなあと密かに心和ませながらタオルで柔らかく髪を拭っていると。

「番組の途中ですが、臨時ニュースです」

唐突に画面が切り替わる。

「ピチカ、リモコン踏んだ?」
「臨時ニュースって言ってるじゃん」

少女たちも一時休戦しながら画面に注目する。

「どうしたんだ?」
「フォックス」

ルーティは振り返って。

「あはは。最近は物騒だからね」

苦笑いを浮かべながら向き直る。

「レイアーゼ政府は先程──亜空軍の総指揮者である、マスターハンドとクレイジーハンドの身柄を拘束したと発表しました」
 
 
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