第十二章



次の瞬間。

「──────」

ただの声とも音とも判別付かないそれが波紋となり遥か彼方まで鳴り響いて。眩いばかりの光の群れが長く尾を引きながらそれぞれがまるで別の生き物であるかのように畝り、交差して──地上で立ち竦むばかりの戦士たちに突撃する。


それは。

あまりにも呆気ない結末で。


希望は取り払われたかのように思われた。


「……!」

ダークウルフはそろそろと瞼を押し開いて。

その光景を目に。……愕然と見開く。

「お、お前ら……なんで……」


襲いかかってきた光を食い止めていたのは。

何処の誰よりも正義を謳う──


「勘違いッ……」

右肩を左手で庇いながら跪く姿勢だったダークルイージは先程まで戦っていたパックマンがドット状の壁を生成して光の侵攻を防ぐ姿に目を見張った。

「管理下の命令、及び隊長の指示だからっ……仕方なく、なんだからなっ!」

そうして食い止めているのは彼だけではない。

「……くふふ」

ダークミュウツーは笑う。

「こんな未来までは……視えなかったなぁ……」

青いビームを展開した神剣モナドを構えて光を押し返すべく踏み堪えるシュルクを前に恍惚と目を細めながら。両手の指を組んで頬に擦り寄せじっと見つめるのだから懸命に対抗している側のシュルクにはたまらない。

「くぅ……っ!」

光の猛攻に押し切られそうになるも。

「はっ!」

不意に一太刀で両断されて光が途切れた。

「油断するな。シュルク」

危機を察知し加勢に参じたクラウドが愛剣バスターソードを振るい隣に降り立つ。

「助かったよクラウド」

背中合わせとなりそれぞれの剣を構えて──

「本当に」

地面を蹴り出す。

「不本意だよ、こんなことっ!」


光が粒子となって消え失せればエネルギー砲を放つことで対抗していたロックマンは短く息をついた。尚も状況を理解できず呆気に取られたままでいるダークウルフの腕の中で少年が咳き込めば静かに瞼を伏せた後でおもむろに視線を遣る。

「……貴方も悪い人だ」

少年は笑った。

「は、……子は親に似るっつーだろ……?」


次の瞬間である。


「、な」

ダークウルフが声を漏らしたのも無理もない。

少年の周囲にブロックノイズを模した青白い光がぽつぽつと浮かんだかと思うと、まるで糸を縫うかのように傷口がみるみる内に内側から修復されて──最終的に跡形もなく塞がったのだ。

「神様ってェのは」

少年は先程よりか通る声で呟く。

「何処までいっても"神様"らしいな……」
 
 
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