第一章
ある境を越えた途端だった。
不気味なほどに音が静まり歩く音だけがいやに響く。周りの景色は変わっていないはずなのに吹く風もなく違和感が纏わり付いて離れない。
「ヤな感じだろ?」
ソニックが肩を竦めた。
「何だか……気味が悪いわ」
口元に手を添えながらぼそりと呟いたルフレを隣を歩くマークが気遣う。
「あれだな」
スネークの声にルーティは顔を上げる。
「う、わ……」
なんと──巨大な穴だろう。直径は五十から百メートル近くあるのではないだろうか。巨大であるだけに圧倒されるが思っていたよりも浅く数多の人間が投げ込まれたなどという恐ろしい形跡も見られない。とはいえこれが自然現象による陥没とは考えられるはずもなく。
「もしかしてマスターとクレイジーはこの穴を調べさせていたのかな」
ルーティは思わず口に出して言った。
「俺たちだけが勝手に調べて報告だけってわけにはいかないだろ?」
「つまり手付かずってわけだね」
「That’s right.」
ソニックが応える。
「あっ」
それを聞くや否やウルフが斜面を滑って降りていくのだからルーティは慌てた。
「僕たちも行こう」
「そうね」
……次々と降りていく。
「待ってよう!」
自分も転げ落ちないようにしなければ。