第七章
地上の混戦に反して。
空はこれまでにないくらい静まり返っていた。
「いけないんだ。お兄様」
ダーズは無邪気に肩を跳ねて嗤う。
「……殺しちゃったの?」
冷たく視線を返しながら対峙するキーラの傍ら。
そこには。
白い魔法陣を背にして。
磔にされて頭を垂れるマスターの姿が──
「あっ」
ダーズは己の傍らの片割れを抱き寄せる。
「駄目だよ。あげないからね?」
片割れ。即ちクレイジーもまた意識を手放しているのか頭を垂れて動かなかった。鎖に三肢を捕らわれた上で脚や腰に触手が絡み付いており仮に目覚めようと抵抗は出来ないことだろう。
「お前には関係のない事」
「あるよ?」
ダーズはクレイジーの頭に頬を擦り寄せて。
「双子を殺さないといけないんだよね?」
キーラは目を細める。
「マスターハンドだけを殺そうとしてもクレイジーハンドの破壊の力が死の
愛おしそうに抱き締めながら。
「クレイジーハンドはおれが預かってあげる」
「お前が延命させた所で目的は変わらない」
「──人形遊びは好き?」
キーラは口を噤んだ。
「昔を思い出しちゃうね?」
程なく。
ダーズの背後に黒く渦巻く空間が現れる。
「遊ぼうよ。お兄様」
ゆっくりと後ろに下がりながら。
「お兄様のマスターハンドとぼくのクレイジーハンド。どっちが勝利に微笑む女神かなぁ?」