第六章
虚空に亀裂。赤黒い爪痕が幾重も。……そして。
「わぁ」
空間を無理矢理に切り開いて現れた二つの影にダーズは然程驚いてもいない様子だった。
「創造神と破壊神?」
「……そうだ」
マスターは冷めた目で返す。
「我々の存在を知っていながら大した愚行だな」
「落ちてきたのはたまたまだよ?」
「とっ捕まえて引き摺り込んだくせに」
クレイジーが言うとダーズは「えー」と言ってはぐらかした。これだけの殺気で威圧しているというのに彼は態度を崩さない。実際、見つけ出すのにも苦労した。ただ谷底に落ちていったのかと思えば彼自身に宿る力を使って簡単には見つけられないよう結界を張っていたのだ。
結界自体は然程大きなものでもないがそれだけに悪気が充満して普通の人間なら幻覚や幻聴に見舞われることだろう。それに充てられても尚この様子から間違いなく人間ではない。
「お前は」
「ダーズだよ」
驚くほど素直に答えた。
「ずっと昔からここにいるんだ。といっても元々は天空人だったのに酷いよね」
ダーズは肩を揺らしながら明後日の方角を見る。
「ボクの姿を見た人間は口々に言うんだ」
眼孔を見開き、振り返る。
「──"混沌と闇の化身"だって」