第六章
……これなら。
うっすらと見える外の世界へ──
「お兄様」
声が聞こえる。
「ずぅっと待ってたのに」
どす黒い悪気が周囲の壁を伝って登ってきた。その内に追い抜かした先に小さくも見えていた外の世界と思しき光を呑み込んで。
「どうして」
ピットの手が不意に離された。
「え」
気付いているのか気付いていないのかピットはどんどん昇っていくのに遠ざかるのに。
落ちていくのに。
「お兄様」
強い衝撃と鋭い痛みが。
幻覚や幻聴を消し去り現実に引き戻した。
「ああぁあ……ッ!」
ルーティは悲痛な声をあげる。地面に衝突したのではない黒い鎖に吊るされていたのだ。
何処から何処までが幻覚や幻聴だったのか全く見当も付かないが少なくとも視界に映る範囲にピットの姿は見当たらない。
「ふふ」
在るのはくすくすと嗤うその主。
「いけないんだぁ」