第四章
地面にへたり込んでいたのは──
「僕たちだけじゃなくて」
ルーティはきゅっと拳を握り締める。
「皆を、……助けることは」
フラッシュバックする。
回避や防衛の為自身の能力を使う者や庇い合う者その全てが光に呑み込まれていく様を。
「似たもの親子だな」
マスターが呟くのをルーティは当然聞き逃しはしなかった。反射的に立ち上がって感情のまま胸ぐらに掴み掛かろうとするのをクレイジーが素早く手首を掴んで止める。
「!」
ルーティはクレイジーを振り返った。
「……手」
兄に手をあげようとした手前冷たく刺すような目の色をしていたクレイジーもこれには思わずきょとんとしてしまう。そんな彼を差し置いてルーティは急ぎクレイジーの左手の手袋を無理矢理取り上げてしまうと小さく目を開いた。
「……こんなに」
手首に触れられた瞬間、気付いたのだ。
切り傷。手豆──白い手袋の下に隠されていた彼の手は激しい戦いの痕跡を滲ませて。決して美しいものではなかったという──事実に。
「……あの時」
クレイジーは静かに口を開く。
「僕も兄さんも。神力は残り僅かだった」
退避するべく創造の力を振り絞って呼び寄せたのは宇宙を駆ける星そのものだった。光と同等かそれよりも速く移動できる暴れ馬よりも扱い難いそれが唯一認める戦士は一人だけ。
破壊の力を使って空間を裂いた先に飛び込んだのは意外にも二人いた。想定外の一人を何とか逃がすことに成功したのはあの場に居た一人一人が自分が退避することばかりを考えず能力や人柄から文字通り全てを託せるものと判断して退路を作り、繋ぎ通したから。
「お前は自分自身のこと父親の出涸らしとでも思ってるかもしれないけど」
目を細める。
「……そうでもないんじゃない」