第四章
太陽も月も存在しない──即ち光が存在しないその場所は遥か彼方まで薄暗いものの今でこそ救いだったのかもしれない。空も地面も紅紫が占める其処は亜空軍が本拠地とする亜空間。
この世界の裏側に存在するとされる裏世界に雑な形で放り出されたのはカービィとルーティだった。乗り物として頼りにしてきたワープスターは不時着と同時に砕けて粒子となり消滅。
「いったた……」
カービィが頭を摩りながら上体を起こして振り返るとまるで布を縫うようにマスターが素早く光の糸を引いて空間の裂け目を閉じるところだった。光の粒子がほんの少し縫い目から漏れ出したが間一髪といったところか音沙汰はなく。カービィは深く息を吐き出す。
「あれが──古代兵器サマの真の力ってわけ」
圧倒的だった。神力を一時的に取り戻しただけとはいえあれの動きを確実に捉えていたから。勝てるものだと踏んでいたけれど。
「説明してくれるよね」
カービィは双子を見遣る。
「信仰心が神の力となるという認識は正しい。だが何度も説明しているように、神力とは本来長い時間を掛けて得るもの」
マスターに続けてクレイジーが口を開く。
「後はもうお察しの通り。付け焼き刃じゃ一時凌ぎが限界だったってだけの話」
カービィは溜め息を吐きながら衣服に付着した砂埃を払い立ち上がる。
「やったか、やってないの典型じゃん。フラグ回収ごちそうさま」
双子はちらっと視線を交わす。
「喚き散らさないから珍しいとか何とか思ったでしょ。これが成長ってヤツですよ」
存外呑気なものである。
「僕よりそっちのケア優先した方がいいよ」