第四章



「パルテナ様?」

こんなにも慌ただしい状況だというのにピットが怪訝そうに声を掛けたその人は撤退せずその場で自身の胸に手を置いて瞼を閉ざしている。

「何をしてるんですか?」
「残念ながら私たちが退避したところで彼らが潰されてしまうのはもはや時間の問題です」

パルテナはそっと目を開く。

「信仰は神にとって力となります」


……信仰。


「神力になるってこと?」

ルーティは思わず食い付いた。

「恐らく」

今のマスターとクレイジーは神力を奪われ枯渇させている状態。魔力だけで戦い抜くには当然限界がありそれこそパルテナの話した通り。

信仰即ち想う力が彼らの力になるのなら試してみる価値は充分あるかもしれない。

「……やってみよう!」

ルーティはマスターとクレイジーを見遣る。

防戦一方である彼らの背中に想いよ届けとばかりに勢いよく手を組んで瞼を固く閉ざす。その様子に気付いた面々がそれぞれ手を組んだり胸の前に手を置いたり願いを掛ける。

「成る程」

キーラは目を細めた。

「神々は繊細でおられる」

マスターは笑う。

「選び取られてこそ価値がある」
「愚鈍共に余地を与えるなど慈悲深い」
「心外だな。残念なことに貴殿は雛と変わらぬ知性をお持ちのようだ」

キーラはより一層目の色を紅く染め上げる。
 
 
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