第三章
ガンサイドによる先程の攻撃。撃ち出された光弾が見覚えのある形状に変化して襲いかかってきたが確かに見間違いなどではなかった。この世に二つとある筈もない伝説に語られる剣や槍といった武器の数々。仮に創り出せるとすれば創造神たるマスターハンド以外に有り得ないのだが。──奪った神力をデュオンに積むことで同様の能力を与えたということか。
「来るぞ!」
立ち込める砂塵を突き破り飛び出してきたデュオンにスピカが声を上げる。マスターとクレイジーには何か策があるのだろう素早くその場を退いてしまったがそういうことなら此方も時間を稼ぎ足留めする他ないだろう──デュオンは両腕の剣を地面に突き立てると深い爪痕を残しながら接近。さて創造神にも劣らない防壁を繰り出してくる敵を相手に真っ向から仕掛けたのでは骨が折れる。それは自分だけでなくスピカもダークシャドウも重々承知の筈。ルーティはちらりと視線を交わした。
「あれには神力が積んであるというだけだ」
黒の閃光が迸る。
「回復の術は持ち合わせていない。神力を放出させて空になったところを叩き込むぞ!」
無茶苦茶ではあるが、悔しいことに理に適っている。あまり時間をかけたくないのが正直な感想だがデュオンの投入で此方を完全に潰す算段でいるのなら思い通りになってやるものか!
スピカの一声で伸びた影の中からダークガノンドロフが飛び出した。今まで何処に身を潜めていたのかと思えばそんな所に居たらしい。彼の手には漆黒の大剣が握られており、まずはデュオンの一太刀を受け止める。それだけでも充分なものだがぎりぎりと押し合った後、雄々しい声を上げて押し返した。これには思わず呆気にとられまがふらついた隙を逃さずダークウルフとダークファルコの影からそれぞれダークマルスとダークロイが飛び出し剣を振り翳す。
振り下ろされた剣は瞬時に展開された防壁によっていとも容易く防がれた。「ルー!」という呼び声によって我に返ったルーティはスピカに続けて電撃を放つ。放たれた電撃は防壁に衝突すると爆発──耐久力が落ちたところをダークウルフとダークファルコが銃による追撃。
「……っ」
その表情の変化をルーティは見逃さなかった。
「ダークウルフ?」
「──今だ!」
スピカが声を上げるとダークマルスとダークロイは空中で体を捻って薙ぎ払い──ここでようやく防壁が砕け散る。やったかと思ったのも束の間デュオンは体を回転させてガンサイドに切り替わった。直後構えられた砲口に躱す術などなくルーティは冷や汗を垂れる。