第一章



ペレジア──地上界、炎の紋章を掲げる戦士たちの故郷の集まる東の大陸の内やや南西に位置している砂漠地帯にある国。"熱砂の国"とも例えられる通り高温乾燥の気候である。隣国に位置するイーリス聖王国では邪竜とされているギムレーを神竜として信奉しており、狂信的な信者たちで構成される教団も存在している。


「見えてきたね」

呟いたのはマークである。

「トーナメント見たかったなぁ」

ルーティは溜め息を吐き出す。

「さっきの試合はどうなったのかしら」
「おい。あまり動くんじゃねえぞ」

ルフレは慌てた様子で、

「ごめんなさい」
「あまり脅かさないであげてよ」

ウルフの操縦するウルフェンの翼の上に乗って現場へ向かうのはルーティ、マーク、ルフレの三人だった。双子軍師たる二人はペレジア出身ということで誰よりも地形を把握している点で何かあった場合立ち回りに貢献できるだろうと自ら名乗り出てくれたのである。

「よかったの?」
「クロムのことかい?」

マークは苦笑いにも似た笑みを浮かべた。

「……よくない思い出ばかりだからね」

それ以上は語られなかったがルーティも余計に問い質すような真似はしなかった。恐らくこれ以上は過去の話に触れてくるのだろうが何処か憂いを帯びた二人の目を見た後ではまさか何も言えるはずもなかったのだ。

「辛気くせえ連中だ」
「ウルフ!」

この人だけは!

「空気を濁したのは事実だからね。謝るよ」
「マークも下手に出なくていいんだから──」
 
 
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