第二章-前編-



はあっと息をこぼして構える。――第四回戦。

「……?」

この言い草では自画自賛というものだろうがやけに劣勢だな。

ユウは構えを取り直しながら横で浅く息を弾ませるリオンを見た。……自分たちには特別な目がある。“災厄の目”と恐れられる未来を見通す目と、心の内を読み取る目。それが生まれついての能力だった。

だから戦闘中はそこまでの苦戦を強いられない。多用しなくとも要所要所で発動すれば相手の動きなどお見通しだった。実際、それでこの試合に参加していたアイスクライマーのポポとナナ、デデデには退室願えたのだが問題はあの名前も知れない謎の仮面の青年……とその横の黒いローブの男。或いは女かもしれないが。


……久方ぶりだな。

未来も心の内もこの目に映らない相手とは。


アップデートした際にその辺の能力にジャミングのようなものがかけられたのかとも疑ったのだが他三人に使った時は問題なく発動した。

まあ使わなければ敵わないという相手でもない。

「……、」

青年がチャキっと剣を構え直すのを合図にリオンとユウは駆け出した。

蹴り出し、跳び蹴りを仕掛けるリオンに対しユウは双眸を金色に瞬かせるとふっと音もなく消えてローブの男の背後へ。気付いて振り向き様拳を振るってきたがその場で一瞬だけ消えて回避、生じた隙を逃さず回し蹴り、腕を立てられ防御されたが構わない。更に回転をかけて浮遊からの踵落とし。

一方でリオンも仮面の青年との熱い攻防戦を繰り広げていた。打っては躱し、また躱して隙を縫うように打つが防御して返される。双方息を弾ませ、踏み込んで。

「……負けるわけには」

青年は大きく剣を引いて叫んだ。

「いきません!」

すかさず防御の構えを取るリオンだったがそれが間違いだった。突きによる一撃は一瞬にして防御を崩し、小さく目を開いて。次の一撃は容赦なく。


――未来は変えてみせます。


「……!」

今のは。

「リオン!」
 
 
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