第二章-前編-
戦いの幕を切って落としたのはルーティだった。
それを合図に。舞台は戦場へと変わる。
「はあっ!」
激しくぶつかり合う拳と拳。
音が鳴る、汗が滲む。先程のやり取りなど無かったかのように。
「うぉあっ!?」
衣服がほんの少し水に掠めただけなのにネロは声を上げた。
「おまっ、気をつけろ!」
「ごめんごめん!」
悪びれた様子もなく謝るローナの直ぐ側を雷撃が駆ける。ひらりと躱して直後目の前に飛び込んできた拳を流し、口元には笑み浮かべて回し蹴り。難なく躱した向かいのルーティ、瞬時に踏み込んで突撃を仕掛ける。
「おわっ」
今度も躱したが体勢が崩れた。その少しの隙も見逃さず懐に飛び込んだルーティは頬に青の閃光を迸らせ、両手を重ねて翳し近距離で電撃を放出する。
「ローナ!」
水タイプである彼女に電気タイプの技は厳しい。
一部始終を見ていたネロは思わず叫んだ。
「っ……」
弾き飛ばされたローナは空中で後転、地面に手を付き受け身を取ってその後足の裏を摩りながら勢いを留めて。……どうにか。崖下に追い出されることもなく。
「心配しなくていーよ!」
ローナは庇うように構えていた腕を払うとにっと笑って。
「――今、すっごく楽しいから!」