第二章-前編-
既に準備は整えてある。ルーティは視線を受けながら機械の前に立った。
パネルは手招くように青い光を灯している。ルーティはそれをじっと見つめた後で足を踏み出した。右足でパネルをくっと踏んで、次に左足を乗せる。
転送の時。
視界が真っ白になって、やがて弾ける。数秒とかからないものだった。それでも、初めの内は慣れなかったものだ。
ルーティはゆっくりと辺りの景色を見回した。……此処は『戦場』。
大乱闘の舞台となる場所。
ひと目で今まで戦った其処より広いものだと分かった。足場も、三つだったものが六つに増えている。恐らく最大八人で戦う舞台となるため、元あったデータを参考にして新たに作成したのだろう。
『大戦場』と呼んだ方が相応しいのかもしれない。
「おにぃー!」
ルーティは全ての足場を見上げる下の位置に立っていた。
声に従って顔を上げると、ピチカが向かいの一番遠い足場の上から手を振っているのが見えて。片手を挙げて応えようとしたその時、気配を感じて見上げる。
さあっと灰色の髪が風に吹かれた。
「……随分と高いな」
一番上の足場に降り立ってネロは呟いた。
「落ちないでちょうだいね」
続けてその左下の足場に現れたシフォンがくすっと笑う。
「それを飛べる俺に言うのか?」
「油断大敵よ」
シフォンの向かいの足場に、リム。
「空中戦が得意なのは貴方だけじゃないんだから」