第二章-前編-
「質問していいかな」
凜とした声は自分が知る限り誰のものでもなかった。
「……あ」
視線を移して見上げる。そこにいたのはすらりとした身長の青年。
控えめな紺の髪を飾るのはティアラだろうか。服装含めて風貌はマルスとよく似ている。黒い仮面で顔の上半分を覆っているのはこの人の趣味なのかな。
「君はどうして戦うんだい?」
ありがちだが、まさかこのタイミングで聞かれるとは。
口調まで似ているな。リスペクトというやつか……
「その」
ルーティはぱっと視線を逸らして、また、見上げた。
「守りたいから」
青年は黙っている。
「父さんが守った世界を、僕も守りたいから」
仮面の奥で目を細めるのが分かった。
「……そう」
不意打ちにも程がある。はあっと息を吐き出してルーティは胸を押さえた。
「終わったみたいだよ」
その声に促されるがままモニターに注目すると、ちょうど画面にトーナメント表が映し出されるところだった。どくん、と心臓が胸を打つ。
……高鳴る。
「ぁ」
小さく目を開いた。