エピローグ
神力を大幅に消耗した際は回復を図るのに意識まで手放してしまうので一時的にこの世界から姿形を消失させていた──という解釈で合っているのだろうか。回復の仕組みは分からないが少なくとも魔力とは勝手が異なるようだ。
「さて」
マスターは響くような声音で。
「帰っておいで」
次の瞬間。
「え」
柔らかな光が体に灯った。髪がふわりと靡いて足下から渦巻くように風が巻き起こる。呆気にとられているとやがて自分の胸から紫色の光の玉が飛び出した。金色の髪の中に混じっていた薄紫は途端に抜け落ちてルーティは小さく目を開きながら光の玉の行き先を追う。
「あっ」
その光の玉はルーティの周りをくるくると円を描いた後正面に回って眩い光を解き放つ。
「おはよう」
反射的に瞑った目を開けば。
「タブー!」
ああ。そうか。
ずっと聞き覚えのある声だと思っていた。
「君が呼んでくれていたの?」
「そうだよ」
柔らかく笑う。
「ルーティ」
両手を伸ばして頬に触れる。
「うん」
額を擦り合わせる。
「おはよう──」