エピローグ
どんなに納得できないものだったとしても。
……僕たちは。
「?」
ルーティは顔を上げる。
「誰か呼んだ?」
突拍子もない質問に誰も顔を見合わせた。
「……呼んでないよ?」
ゆっくりと周囲を見回す。確かに聞こえたその声は何者とも言えないが何処か懐かしくて──春風のような柔らかな声を確かに覚えていた。
ルーティ。
突き動かされるように立ち上がる。
こっちにおいで。
「おにぃ!?」
気付いた時には駆け出していた。困惑した声が名前を呼ぶけれど立ち止まるはずもなく。ただ何故か早く行かなければならないと焦燥に似た感情を抱きながら走る。走る。
待って。
まだ、行かないで。
伝えたいことがあるんだ。
「、ッ」
正面玄関の扉を開け放った。
差し込んだ陽の光が予想以上に眩しくて。反射的に瞑ってしまった目をゆっくりと開くと見慣れた中庭が迎えた。踏み固められた土を踏んで進み出る。声はもう聞こえなくなっていた。
「マスター」
確かめるように。
僅かな不安を拭い去れず小さな声で。
「クレイジー」
「なぁに」
「うわあああぁあ!?」