エピローグ
まさか残された仲間たちを信用していなかったという話ではなく。ルキナの見た絶望の未来をそっくりそのまま再現されたあの場をどうして乗り切ることができたのだろうとか。これまで如何なる絶望もこの目で終止符を打つ瞬間を見届けてきたものだから不安でたまらない。
この世界が偽物だったとしたら?
随分と弱気な自分に鞭を打つように掬い上げた水を顔面にぶつけて。奇跡的に誰とも遭遇することなく洗面所を訪れた自分はここでようやく鏡越しに自分と向き合う事となる。
「……?」
髪が伸びている。
どうりで首元がこそばゆいと。それによく見てみれば一部の毛色が薄い紫色に変わっているし誰かの悪戯とかじゃないだろうな。勝手に人の髪を弄るなんて僕じゃなきゃ裁判沙汰だよ。
ぐぅぎゅるるる。
「あう」
何処まで情けないんだ、自分の体は!
慌てて辺りを見回したが誰の影も見当たらない現状にほっと胸を撫で下ろしつつ、とりあえず空腹を満たすべく食堂を目指すことを決意。
高カロリーなものは避けるとしよう。……
「、はー」
水洗音の後扉が開く。
「ネロ!」
洗面所に入ってきたのはローナとシフォン。
「ふふ。やるじゃない」
「男を見せたね?」
「あんなに壊滅的とは思わなかったんだよ」
ネロは腹部を摩りながら苦い顔。
「独創的って言うのよ」
「知るかよ」
「料理の練習くらいしとかないとねぇ」
ローナは肩を竦めて笑う。
「はやく目を覚まさないかなあ」