最終章-後編-
「……! これは……」
胸の前に浮かび上がるそれは絶望の未来の中で邪竜ギムレーを信仰する教団に刻み付けられた印。おどろおどろしい紫色の光を放つその印はクレイジーが差し出した手を握るような動作を行うと赤の粒子を残して消えてしまった。
「これで」
マスターは告げる。
「もう二度と絶望の未来と関わることはない」
目を開いた。
「暫くは記憶情報として居座り続けるだろうがあの未来に転ずる手段も可能性もそして意味も何もかも全てに至るまで削除されている」
淡々と告げられる真実に。
「私が」
絶望に酷似したものを覚えながら。
「何のために戦ってきたのかも」
誰と共に歩んできたのかも。
「作ればいい」
はっと顔を上げる。
「好きなように好きなだけ」
柔らかな風が吹き抜けていく。
ふと肩を触れたのはマークだった。強制的な力から解放された彼らの他にも笑いかける仲間の姿がそこにはあった。そして理解する。
消えたのではない。
新しい未来に生まれ変わったのだと。
「畏れを抱くな」
言葉のひとつひとつに。
「道を開け」
何物にも変えられない重みがある。
「どんなに非力でも愚かでも」
そう。
お前たちには。
「……仲間がいるのだから」