最終章-後編-
浮かび上がる。幾つものウィンドウ。
ひとつひとつに映し出される、聖王女ルキナの全て。そこには絶望の未来に立ち向かい戦ってきた戦士の姿があった。何も知らない日常も。未来を知った後の束の間の休息の日々も。
ルキナという少女を象る全てだった。
神の手が触れて。ウィンドウはひとつ──またひとつと消えていく。誰に止められる筈もなく新たな恐怖と絶望を目の当たりにしながらそれでも呑み込むしかなかった。
それが。
この世界を正しく導く為のものならば。
最後のウィンドウが残された。ルキナは溢れて止まない感情を抑えることさえ忘れて裾を握り頭を垂れてしゃくり上げている。
「ルキナ」
その名前を呟いたのは誰だったのか。
蒼白い光がルキナの周りを円描くように飛んでウィンドウの中に飛び込んだ。途端に眩い光が体を包み込んでルキナを含む付近に居合わせた全員が目を瞑って。形容し難い優しくて温かいものに体の芯から満たされていく──
「目を開けて」
誰かの声に導かれるようにして。
少女はそっと瞼を開いた。