最終章-後編-
ルキナは胸の前に手を重ねて添えた。
「絶望の未来を覆すために時間遡行をして──皆が助かって。悪夢の根源も、もう恐らくどの時間軸にも世界線にもいないのでしょう」
確かめるように言葉を口にしながら。
「だったら私はもう、充分です」
憂いを帯びた目を細めて笑う。
「……充分、救われました」
歴史に触れて運命を捻じ曲げる。
それはきっといくら未来を救うためであれ十分すぎるくらい彼らが言ったように予測の範疇を越えて行為に違反していたことだろう。
敢えて見逃していたのだ。
人間を試すように。
そして。判断を下した。
管理者としての役割を果たすために。
互いに我儘を聞き入れて現在に至るのなら今度こそ運命を受け入れよう。絶望を覆した少女は自分が破滅する有るべき世界線に還るだけ。
誰よりも。幸せそうな顔をして。
「そんなことを言うな!」
マークは叫んだ。
「充分なはずないだろ!」
力に抗うように前のめりになって訴えかける。
「嘘をつくな! 見栄を張るな!」
はっと顔を上げて。
「ルキナの未来はルキナが決めるんだ!」
零れ落ちる。
「運命なんかじゃない!」
溢れる。
「っ……う、……ぅ」
素直で我儘な感情が絶え間なく。
「うぅう……っ!」
口元を覆って呑み込む。
"皆と。その先の未来も見てみたい"。
「マスターハンド!」
無慈悲に双子の手が翳される。
「クレイジーハンド!」