最終章-後編-
ひび割れて。
破片がこぼれ落ちる。
弾ける。……
粒子は風に流れて溶けた。後には何一つとして残されるはずもなく静寂に呑まれていく。
「分かってるよ」
問うより先に答えて振り返る。
「……!」
視線の先にはルキナの姿があった。正義部隊の各員は彼らと対峙したあの日を思い出す。
イレギュラー。
「……何」
案の定彼らは地に降り立つと真っ直ぐルキナの元へ歩みを進めていた。けれど阻むようにしてルフレとマークが立ちはだかればクレイジーは冷たい声色で静かに見据えて。
「退かない」
それが神々に仇なす行為であったとしても。
冒涜でも叛逆でも。
「ルキナは」
「退け」
マスターがそう告げると腕を広げて立っていたルフレとマークの体に電撃が走った。だらんと腕を垂れて本人たちの意思とは関係なく後退、行路を開いて渡す。マークは顔を顰めた。
「所詮は模造品。俺たちには逆らえない」
「卑怯だぞ……っマスターハンド!」
「お前たちが邪魔な場所に立っているからだ」
マスターとクレイジーはルキナの前へ。
「マスターハンド! クレイジーハンド!」
「どんな罰も僕たちが引き受ける!」
ふたりは答えない。
「だから」
「ありがとうございます」
応えたのは。
「ルキナ」
少女は笑いかける。
「充分です」