最終章-後編-
響き渡る。
「くはははははは!」
いつまでも、何処までも。
煩わしく纏わり付いて離れない。
声も。──絶望も?
「違うな」
空気の流れがぴたりと止んだ。
「それは愚かな憶測に過ぎない」
「……何?」
マスターはゆっくりと右手を差し出す。
「証明しよう」
掌の上に生成された青い光の玉がキューブごとベンゼルを撃ち抜いた。しんと静まり返る中で不意に水の滴る音が響いたかと思うと。
次の瞬間。上空に幾つもの映像や情報を映したウィンドウが浮かび上がったのだ。
「こ、これは……!」
誰かが声に洩らしたが直後ルキナが息を呑む。惹かれるようにして目にしたウィンドウに映し出されていたのはかつて仲間と共に立ち向かいそして敗れた絶望の未来。
「此れはお前の関わった現在過去未来の全て」
マスターは語る。
「──イレギュラーとは何か。それは本来知り得る筈のない知識を持って境界を越えて過剰に干渉する不都合且つ不利益な存在を指す」
「異なる時間軸や世界線。全てにおいて処理の範疇を超えてこの世界に多大なる影響を及ぼすものと判断された場合僕たちはその存在に関し積極的に迅速に神威を振るい──排除する」
彼らの発言並びに思考が読めないのはその場にいる誰も同じだった。けれど少なくとも彼らはそれを深く理解した上で悪夢の根源と対峙している。纏う空気は清らかで冷たく。ベンゼルは遅れて理解に及ぶと声色を一変させる。
「……まさか」