最終章-後編-



彗星の如く急降下を仕掛けてきた紅の玉をすかさず躱した。上昇するそれを機械化した右腕を構えてエネルギー弾を放つが当たらない。そうこうしている間に紅の玉は高い位置に留まるともう一度強い光を放って降下した。眉を顰めて構えを取るロックマン。何とかして奴を完全に仕留めなければ。けれど実体を持たないあれを本当の意味で倒す方法なんて有り得るはずも。

「危ない!」

くそ、このままでは。埒が明かない──!


「──!」


ロックマン含む戦士たちを守るようにして。

青い防壁が展開されたのは直後のこと。


「何……ッ!?」

敢えなく弾かれたベンゼルを何処からか飛んできた紫色の光を灯した柱が襲う。難無く躱したものの次は死角から先端がやじりのように尖り長く尾を引く黒い光が幾つも。その姿が小さいだけあって回避も容易だったが何処まで行動を読まれていたのか次の瞬間には薄水色のキューブのようなものの中に閉じ込められてしまう。

「神の手を煩わせてくれるなよ」

響く。この声は。

「劣悪役者の分際で」


淡く色を宿した光の玉が上空より舞い降りる。

それは程なく膨張すると巨大な白い手袋を纏う右手と左手の姿となった。けれどそれもしゅるしゅると糸を解くように白を解放すると誰もがはっと息を呑んで目を開いた。


「マスターハンド……クレイジーハンド……!」


柔らかく吹く風に髪を靡かせて。開かれた瞼の奥に灯る朱と蒼。普段と異なる白の和装に身を包む彼らは静かな空気を纏っていて。

「く……くく」

ベンゼルは高らかに笑い出す。

「くははははは! お前たちに何が出来る!」

双子は変わらず冷たく見つめている。

「このベンゼルを永き眠りから解き放ったのは他でもない人間だ。欲望が地を這う限り神々の愛した世界は幾度となく平穏を脅かされることだろう。悪魔が望むのではない、人間がそれを自ら望んで進んで延々と繰り返すのだ!」

嗤う。

「未来は変わらない。かの英雄達の滅んだ先で世界は再び同じ道を辿るだろう。欲望に飢えた愚かで無様な下等生物が蔓延る限り──!」
 
 
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