最終章-後編-
……は?
「何を言ってるんだよ、ロック」
まるで理解できないといった様子で苦笑いにも似た笑みを浮かべながら僅かばかり震えた声でそう言ったのはマークだった。
「今更どう策を講じたところで」
「未来は変わらないんですよ?」
ルフレが続ける。
「だったら全員で立ち向かった方が──」
「──それじゃ駄目なんだ!」
誰も言葉を呑み込んだ。
「それじゃ」
力の限り震える拳を握り締めて。
「君たちを守れない……!」
静まり返る。
「……ルキナ」
ロックマンは静かに口を開く。
「君の語った未来の中でフォーエス部隊は壊滅──半数以上が無惨に殺されてしまっていた。何故殺されたのか。それは無論この身を滅ぼす覚悟で敵に立ち向かったからだ」
絶望の根源を前に決して逃げる事を選ばず立ち向かった。
自分たちがここで食い止めなければ今度世界が絶望に堕ちてしまうことを危惧して。
それは──どんなに恐ろしかったことだろう。圧倒的な力に捩じ伏せられ、仲間が呼び掛けに応えなくなってもそれでも退かず諦めず。
命の灯が燃え尽きる、その時まで。
「だったら、立ち向かわなければいい」
「──何故ですか!」
ルキナは悲痛に顔を歪ませた。
「そうだよ、隊長」
ハルは今にも泣き出しそうな顔で。
「皆で逃げようよ」
訴えかける。
「どうせ世界が滅ぶなら誰もぼく達を責めたりしないよ」
「それは出来ない」
ロックマンは静かに首を横に振る。
「逃げた先で戦いを余儀なくされその結果壊滅したという可能性もある……」
「だったら! 逃げても逃げなくても──」
「君たちを死なせたくないんだ!」
はっきりと言い放ち再び場が静まり返った後で今度は絞り出すような弱々しい声音で。
「これが……最後のチャンスなんだ……ッ」