最終章-前編-



砂利の音。不穏を奏でる音。

「まだ」

ピチカは見据えて構えを取る。

「……足りない」
「来るぞ」

ディディーが呟くと各自共に頷いて。

「!」

見えない攻撃が虚空を薙いで地面を叩きつけたことだけは確かだった。攻撃を直に受けてはいないが舞い上がる砂塵が視界の妨げとなり何処から攻撃が下されるか検討もつかない状況の中不意にリュカは小さく咳き込んでしまう。その瞬間砂塵の中で高速で動く影を見つけてネスは思わず声を上げる。

「リュカ!」

──弾き飛ぶように砂塵が失せた。両腕で己の身を庇い目を瞑るリュカ。恐る恐る瞼を開いてはっと息を呑む。攻撃を下したルーティの拳を受け止めていたのはリオンだったのだ。差し出した右手の甲に左手を添えて波動まで纏わせて尚踏み込みを無視してじりじり押されていく。

リオンはくっと眉を寄せると攻撃を流すべく素早く腕を引いて予測通り右下に吸い寄せられたところで手首を打ち落とした。肉眼では分離をしているようだがどうやら透過しているだけという話らしい。リオンは目を細めて脚に波動を纏わせると回し蹴りを首に打ち込む。が。

「……!」

ぐりんと首が此方を向いた。圧倒的不利な体勢から地面に手をついて前転と素早く跳び上がり宙を舞いながら降下──踵落とし。先の読めない動きに目を開くリオンを前に呆然としていたリュカはようやく我に返ると両手を突き出す。

「PKフリーズ!」

攻撃を下すためではない。炸裂する青白い光は確かに目を眩ませたようでリュカはその隙に自身のこめかみに人差し指を当てた。程なく生成された青の光の玉は念力によって的確に操作がなされ半ば強引にリオンとリュカの体を纏めて攻撃圏外へと押し出す。

「はあっ!」

次に攻撃が降り注いだのは空からだった。肩を並べて拳を振るったが透明な防壁がそれを阻み赤紫色の衝撃波が弾き飛ばす。地面に叩きつけられる直前念力を発動したユウが攻撃を下したリムとドンキーの二人を受け止めたがその隙に背後を取られてしまう。右腕を鋭利な刃に形状変化させて払えば潜り込んだリンクが剣を構え受け止めた。甲高い金属音が鳴り響く。
 
 
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