最終章-前編-
爆発音が鳴り響いた。
攻撃圏外で事の成り行きを見守るばかりだった面々は思わず息を呑んで。その内の一人であるリムも両手で口元を覆い硬直していた。
「、……」
視界の妨げとなっていた砂煙が次第に晴れてくるとスピカは反射的に瞑ってしまっていた瞼をそろそろと開いて顔を上げた。痛みも違和感もない幸運な現状に不審感だけを残しながらふと目の前の影に気付けばゆっくりと目を開いて。
「ぴ……ピチカ……」
そこにいたのは。
「にぃに」
背中を向けた少女は口を開く。
「ダークシャドウの皆を連れて逃げて」
スピカは驚愕した。
「これからが大事だって時に戦力の半数以上を失うことがどれだけリスクの大きいことなのかそれはちゃんと分かってるよ」
でも。ピチカは続ける。
「ダークシャドウの人たち。限界なんだよね」
はっと息を呑む。
体の大半を占める影虫が一向に立ち退く気配のない陽射しの影響により死滅していくと同時に耐性が著しく低下。皮膚は柔らかく変質し傷を受けやすく何より小さな火傷の痕が点々と。
事実ダークシャドウの面々は息を上げて地面に立っているのもやっとだった。それでも彼らが退却を選ばないのは誰より想い慕う彼の意志を尊重していたからこそ。偽物とは一概に言ったところで彼らもまた同じ戦士なのである。
もう二度と。
失いたくないのなら。
「分かってる」
スピカは苦渋に眉を顰める。
「でも!」
「だめだよ……にぃに」
ピチカは少しだけ顔を向けて笑いかけた。
「それ以上言ったら嫌いになっちゃうよ」
口を噤む。
「仲間なんだよね? 家族なんだよね?」
前に向き直る。
「にぃにの家族は僕の家族だもん」
本当は。
ちょっとだけ寂しいけど。
「だから」
零れ落ちそうな我儘を呑み込んで紡ぐ。
「──今度は、僕に──守らせて」