第二章-前編-



……火ぃ吹いてる。

「おおっ!」 

惨事を遠目に眺めていたロイは振り返った。

ピットが歓喜の声を上げた箱の中をひょいと覗き込む。

「『神器クッキー』?」
「エンジェランドでは定番の名物菓子だよ」
「『天使のカステラ』と迷ったんですけどねぇ」

そう言って左手のひらに右肘を乗せて、右手を頬に当てる緑の髪の女性。天界ではピットの上司をやっていたパルテナという女神様らしい。

「どうぞお構いなく! ボクこれ大好きですから!」
「……本当は?」

聞かれると照れ臭そうに頭の後ろを掻きつつ。

「『天使のほっぺ』とか期待してました」
「駄目です。あれ高いんですから」
「パルテナ様自腹ですか!?」
「そうですよ?」

ピット、態度を正して。

「喜んでゴチになります!」
「遠慮なく召し上がってくださいね?」

まるで漫才だな。ロイは傍目にクッキーを摘まんで。
 
 
14/53ページ
スキ